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しかし行政は、議会の作成した法のもとで、議会によるチェックと承認を受けた予算に基づいて動くため、本来社会の主役である市民よりも議会の方を向きがちである。また、議員は市民に選べれてはいるが、改選が多くの場合4年に一度であり、しかも日本では市民は個人としては議員にあまり献金しないため、議員は多額の献金をもらえる企業や利益団体の要求をくみ取って動くことが多くなりがちである。
それに対し、NGOは自然保護、福祉、教育など、一部のものの利益ではなく、公共の利益のために活動を進める民間団体であり、3極構造のそれぞれにはたらきかけ、市民の要求を実現させていくことができる組織である。自然保護NGOは、議会に対しては自然保護に関する法整備や予算要求のためにはたらきかけ、行政に対しては自然保護施策の提言や業務の代行などを行い、市民や企業には教育や情報を提供する。このように、NGOは民主的な社会を創造するためには、必要不可欠のものである。
すでに欧米各国では、NGO活動は日本よりもはるかに盛んで、50万人以上の会員がいる自然保護・環境保護関係の市民団体が数多くある。日本では1万人以上が会員として活動するNGOは数えるほどしかなく、国民一人当たりがNGOに対して1年間に出費する額も約800円程度で、アメリカでこの約8倍、フィンランド、ドイツ、スイス、スウェーデン、ノルウェー一で、この10〜20倍の出資をしていることと比べ、大変低い金額である(日本生態系保護協会、1992)。
最近、市民と行政が一体となって事業を進める「パートナーシップ」の考え方が日本でもようやく取り入れられるようになり、自然保護に関わる国際シンポジウムが、複数のNGOと政府機関の共催の形で開かれることが多くなってきた。しかしこれが、シンポジウムやイベントなどは名目上の共催や後援などの形がとりやすいために、「民主化」、「規制緩和」に関わる各国からの外圧に対してのポーズとして行われているのでは意味がない。4極構造のすべての立場が、開放的に、そして日常的に、協力関係を構築していくことが、これからの日本社会に望まれる。またその原動力として、ウィスコンシン州の環境教育プログラムで実践されているように、市民一人一人の環境NGOへの関わりの重要性を認識させ、市民としての行動を積極的に行っていけるような教育が必要である。

 

 

 

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